ごまかさない

「あの、これはですね、友達と…」
「友達?」
「ほ、本当なんです」
サキはその場からそそくさと立ち去った。
アパートの隣人に、抱えきれないほどのドーナツの箱を運んでいるのを見られた。
おかしな女だと思われただろうか?
一人でコレだけの量を食べると思われたら……とにかく恥ずかしい。
真っ昼間からドーナツ食いながらうろついているアイツだって十分あやしい。
 
「みんなー。 差し入れですよー。」
河川敷でゲートボールをしていた老婦達が土手を下りてくるサキをみつけた。
「あらあら。 今日も元気ねぇ。」
「本当、どっさり抱えちゃって。」
「それじゃあ休憩にしましょうか。」
サキを囲んでみんなでドーナツを食べる。
 
そして…
 
ゲートボールをしていた老婦達全員をベンチから見送った。
「サキちゃん、ごちそうさま。」
「ありがとうね。」
一個だけ残っているドーナツの箱は『私の夕御飯用』。 誰にも手を触れさせなかった。
なぜならこの箱の中身は拳銃。
この箱を傍らにおいてしばらく座っていると、散歩中の男が近づいてきた。 彼もドーナツの箱を持っている。
そしてその男はサキの真後ろに座った。
男もドーナツの箱を置き、しばらくして『サキの夕御飯用』の箱を持っていった。
残った箱の中身は、金。
 
ありがとうね。そんな言葉を掛けられる資格なんてない。
そうだ。 いまさら大食い疑惑を恥ずかしいなんて思うこと自体おこがましいんだ。
私はもう、汚れてしまっている。
 
帰りにまた買って行こう。
食べるのだけでも『エンゼルエッグ』なんて純真そうなものにするのも悪くない。
 
 
何を書こうとしたのか2行目で忘れました。