好きだなんていえない

12月にしてこの冬1番の寒波が来た日、僕らの町は停電で大変だった。
いや、僕の町は点いたり消えたりだったからまだ良いほうだったのかもしれない。
一部には信号機が止まったり、真っ暗な待合室が映し出される病院もあった。
人はあわてて懐中電灯を買いに走り、行った先のスーパーはバーコードが読み取れない。
僕の家も基本的に暖房は電気に頼っているから、寒くないように布団を敷きなおしてもぐりこんだ。いつ消えても(点いても)いいようにエアコンのリモコンをそばに置いて。そして携帯を握りしめて。
――ドキドキしていた
小学生のとき台風なんかで休校になったとき、なんかわかんないけどワクワクして、いてもたってもいられない。
多分それが変な方向に向いちゃったのかなぁ。
ほら。つり橋で告白するとつり橋のドキドキを「この人が好き」のドキドキを錯覚しちゃうってアレ?
いや。背中を押してくれるのであればなんだっていい。
欲しかったのは些細なきっかけ。
今なら。
今日なら。
この時期だから。
「そっちはほとんど停電してるらしいね。だいじょうぶ?」
メールを送ろうとして――指が止まった。
違うよ。言いたいのはそんなことじゃない。
キミの事が心配でした。
恥ずかしげもなくキミを一番に心配できるようになりたい。
キミが――
僕はキミのことが――
 
メールは打ち直した。
 
 
 
 
「まるっきり『大停電の夜に』て感じじゃね?」
 
返信?
来てないよ?
いいかげん緊急連絡用にケータイの電池とっとかなくてもいいと思うんだけどな……