おぼえてた

久しぶりの東京へ行ってきました。
東京行きの目的は兄に会いに行くことだったがそれはついででしかなくて、浮世絵展を観て、大学時代の友人と会って、入院していた病院に行ってみることがメインイベント。メイン?3つだからトリプル?わからん。いろいろ行ったんです。
一日目は浮世絵展と病院に行くことにした。
浮世絵は写楽歌麿北斎、広重と一気に見れてしかも障害者は無料。障害があることが美術展を見ることとどう関係があるのかはよくわかならいが無料だった。こういうのは優しさなのかバカにしているのかがわからなくなるときがある。
 
次に入院していた病院に行ってきました。
なんのために? と言われるとサッパリわからないのだけどなんか行ったほうがいい気がして、概観を見ていないから見ておきたい、とか、あの病棟からの東京タワーの写真を撮りたい、などとムリヤリ理由をつけて行くことにした。
入り口についた時にはさすがになんか感じるものがありました。とは言っても入院の時は意識も無く救急車で運ばれてきたし、退院の時も車椅子だったのでそれ用のタクシーが入り口にぴったり横付けしていて、病院の入り口なんか見てる余裕はなかったけど。
ロビーを通ってエレベーターで16階へ。この辺は何度か行き来したから記憶もある。
入院中1回だけ「いい加減、外の空気が吸いたい」って言ったときに一番好きな(ここ重要)看護婦さんが連れてってくれて、その時にあの入り口を通って外に出たんです。
まだほぼ右側は動かなくて、口もうまく回んなくて、そんな状況でこれからどうなるのかななんて考えていても、まずこの建物の中からすら出てもいないし……という時に連れて行ってもらったわけです。そりゃ感動もします。
16階に着いたらわりと人がいっぱいいました。変な目で見られるかもしれないけどせっかく来たんだし、病棟から見る東京タワーの写真は撮っていこう。ホントはICUから見上げる夜の東京タワーが一番記憶に残っているんで、それを撮れればよかったんだけどさすがにそれムリだし。とりあえずナースセンターに行って撮影許可もらおう。としたら対応してくれた看護婦さんの顔には見覚えが……いや、間違いなく外に連れて行ってくれたあの時の看護婦さんでした。
あの、その、3年位前に入院していて、そこの、窓からの景色をですね……
「そーだよね。私担当してたよね。やっぱりそうだ、なんか見たことあるなー、と思ったんだよね。」
覚えていてくれた! 3年半前の、しかも入院してたのなんて2ヶ月くらいなもんなのに!
それから近況とかリハビリの状況とか仕事してることをワーって話しました。そこでふと、あれ、俺はなんでこんな必死で話してんだ? なんで忘れられてないことが嬉しいんだ? と考えてしまって。え、俺、この人大好きなの? なんて考えてしまったからなんか急に恥ずかしくなってしまって「…あ。仕事、忙しいですよね。すいません、なんか、しゃ、写真だけ撮らしてください」とか言って窓の外の東京タワーを撮って逃げ帰ってきました。
ここに来たかったのはあの看護婦さんに逢えるかもと、どこかで期待してのことだったのかも。
病室からでてきた俺を見つけて、軽く手を振りこっちを向いたまま後ろ向きに下がっていったあなたが、置いてあったカートに腰を強打してうずくまりながら笑っていたのが今でも忘れられません。
イヤイヤイヤイヤ、んー。なんだこれ、恋してるみたい。
しかしすごい偶然だ。あの頃の看護婦はもうこのフロアには2人しかいないって言ってたし。
なんで覚えていてくれたんだろうとか考えてしまうわ。ホントは違う人だったのに。俺の担当看護婦さん。
次、会うことがあったら「結婚してくれ」って言おう。